この記事を書いた人

日本糖尿病学会専門医、日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約18年医療現場に立つ。
特に糖尿病の分野に力をいれており、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症などの慢性代謝疾患の診療を得意としている。2026年5月に美濃加茂市でクリニックを開業予定。

妊娠糖尿病とはどのような病気?

妊娠糖尿病とは、妊娠をきっかけに血糖値が高くなり、糖代謝に異常がみられる状態のことをいいます。

妊娠前は糖尿病ではなかった方に発症するのが特徴です。

妊娠中はホルモンの影響でインスリンが効きにくくなり、血糖値が上がりやすくなるため、一定割合の妊婦さんが妊娠糖尿病と診断されます。早期に管理を行うことで、母体と赤ちゃんの健康リスクを大幅に減らすことができます。

妊娠糖尿病の症状にはどんなものがある?

妊娠糖尿病は、ほとんどの場合で自覚症状がありません。そのため、多くは妊婦健診で行う血液検査によって発見されます。症状が出るほど血糖が高い場合には、以下のような変化がみられることがあります。

  • 喉の渇き
  • 尿の回数が増える
  • 疲れやすい
  • 体重の急激な変化

ただし、これらは妊娠中によくみられる症状でもあるため、症状だけで判断することは困難です。

妊娠糖尿病の原因には何がある?

妊娠中は胎盤から分泌されるホルモンの影響で、インスリンの働きが弱まります(インスリン抵抗性)。その結果、血糖値が高くなりやすくなります。

さらに以下の要因があると発症しやすくなります。

  • 肥満
  • 体重の急激な変化
  • 家族に糖尿病がいる
  • 高齢妊娠
  • 過去に巨大児を出産した
  • 妊娠前の血糖値が高め

これらの要因があっても、適切な管理によって多くの方が健康な妊娠・出産が可能です。

妊娠糖尿病はどんな診断基準で決まる?

妊娠24〜28週頃に行う「75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)」が診断の基準となります。

血糖値を3回測定し、以下のいずれか1つでも基準を超えると妊娠糖尿病と診断されます。

妊娠糖尿病ではどんな数値が基準になる?

【75g OGTTの診断基準(いずれか1つ以上で診断)】

  • 空腹時血糖値:92 mg/dL以上
  • 1時間値:180 mg/dL以上
  • 2時間値:153 mg/dL以上

この検査は多くの妊婦さんが受けるもので、数値が高い場合にはすぐに生活指導や管理が始まります。

妊娠糖尿病で入院は必要になる?

ほとんどの場合、妊娠糖尿病は外来での管理が可能です。しかし、以下の場合には入院が必要になることがあります。

  • 血糖値が極端に高い
  • 食事療法だけでは改善しない
  • インスリン治療を導入する必要がある
  • 合併症が心配される場合

入院治療では、血糖測定や栄養相談、食事指導などを集中的に行い、退院後は安定した状態で自宅管理ができるようになります。

妊娠糖尿病ではどんな食事をしたら良い?

妊娠糖尿病の基本は食事療法です。難しい制限をするのではなく、血糖値を急上昇させない食事が大切です。

  • 食事は1日3回+軽食を適宜
  • 炭水化物は適量に(全く抜くのはNG)
  • 野菜から食べる
  • 果物の取りすぎに注意
  • 甘い飲み物を控える

管理栄養士による個別指導で無理なく続けられる食事に調整できます。

妊娠糖尿病の治療はどのように進める?

治療の中心は食事療法と適度な運動です。それでも血糖値が改善しない場合には、インスリン注射を行います。妊娠中は飲み薬は基本的に使用しません。

  • 個々に合わせた食事療法
  • ウォーキングなどの軽い運動
  • 必要に応じてインスリン治療

妊娠糖尿病は出産後どうなる?

多くの方は出産後に血糖値が正常に戻ります。しかし、妊娠糖尿病を経験した女性は将来的に2型糖尿病を発症しやすいことが知られています。そのため、出産後6〜12週の再検査が推奨されます。

また、定期的な血糖チェックや生活習慣の見直しにより、将来の糖尿病リスクを減らすことができます。

血糖値に不安がある方は、当院へご相談ください。