この記事を書いた人

日本糖尿病学会専門医、日本内科学会認定医の資格を持ち、医師として約18年医療現場に立つ。
特に糖尿病の分野に力をいれており、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症などの慢性代謝疾患の診療を得意としている。2026年5月に美濃加茂市でクリニックを開業予定。

脂質異常症とは?早めの気づきと対策が大切です

健康診断の結果で「コレステロールが高めですね」と言われたことはありませんか?
その背景にあるのが「脂質異常症(ししついじょうしょう)」という病気です。かつては「高脂血症」とも呼ばれていましたが、現在ではより幅広い異常を含む「脂質異常症」という名称が一般的になっています。

脂質異常症と高脂血症の違いとは?

以前は、血液中のコレステロールや中性脂肪が多すぎる状態をまとめて「高脂血症」と呼んでいました。しかし、現在ではLDL(悪玉)コレステロールが高い場合だけでなく、HDL(善玉)コレステロールが少ない状態や中性脂肪が高すぎる状態も含めて「脂質異常症」と呼ぶようになりました。

つまり、「脂質異常症と高脂血症の違い」は、カバーする異常の範囲の広さにあります。今はより総合的に評価されるようになっているのです。

脂質異常症の原因とは?

脂質異常症の原因には、以下のような要因があります:

  • 食生活の乱れ(脂っこいものや甘いものの摂りすぎ)
  • 運動不足
  • 肥満
  • 遺伝的な体質
  • 喫煙や過度な飲酒
  • 糖尿病や甲状腺疾患など他の病気の影響

こうした生活習慣が長期的に続くことで、血液中の脂質バランスが崩れ、動脈硬化のリスクが高まっていきます。

脂質異常症の症状はあるの?

脂質異常症はほとんどの場合、自覚症状がありません。そのため、多くの方が健康診断で初めて気づくことになります。

ただし、長期間放置すると動脈硬化が進行し、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞といった重大な疾患の原因になります。こうした背景から、脂質異常症は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれているのです。

脂質異常症の判断基準とは?

健康診断や血液検査で、以下のような数値が基準となります:

  • LDLコレステロール(悪玉):140mg/dL以上
  • HDLコレステロール(善玉):40mg/dL未満
  • 中性脂肪(トリグリセライド):(空腹時)150mg/dL以上

               (随時)175mg/dL以上

これらのうち、どれか1つでも該当すれば脂質異常症の可能性があります。一度の検査で判断せず、経過を見ながら診断することもあります。

高血圧症との関係について

脂質異常症と高血圧症の関係」はとても深く、どちらも動脈硬化を進める要因です。両方を抱えている場合は、血管への負担が大きくなり、心筋梗塞や脳卒中などの合併症リスクがさらに高まります。

そのため、脂質異常症だけでなく、血圧や血糖など他の生活習慣病とのバランスを見ながら総合的な対策をしていくことが大切です。

質異常症は治るの?

脂質異常症は治る?」と不安に思う方も多いかもしれません。
結論から言えば、生活習慣の改善によって十分にコントロール可能です。バランスの良い食事、適度な運動、禁煙、適正体重の維持などを続ければ、薬を使わずに改善するケースもあります。

ただし、数値が高くリスクが大きい場合は、薬による治療(スタチンなど)が必要になります。医師と相談しながら、無理のない方法で取り組むことが大切です。

無症状でも、早めの対策がカギ

脂質異常症は、目に見える症状がないまま進行し、将来的な病気のリスクを高める「見えない危険」です。
ですが、早めに気づいて生活を見直すことで、予防や改善は十分に可能です。

当院では、定期的な検査や生活指導、必要に応じたお薬の処方まで、患者さん一人ひとりの状態に合わせてサポートを行っています。
健康診断で気になる結果が出た方や、ご家族に心配な方がいる場合も、どうぞお気軽にご相談ください。

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